P162〜
航行中の船舶について
訳 : ほ う じ 茶

チャート出力 StarGazer for Windows by Delphi
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ホラリーチャート 1644.12.28 PM3:20 ロンドン
Saturn day Venus hour ASC Cancer11.33 MC Pisces8.00


1, 私の船は無事か。それとも沈んだか
2, 船はどこの海上をたゆたっており、いつ新しい知らせが届けられるか
3, 別の船の例


その1
「私の船は無事か。それとも沈んだか」

1644年12月、ロンドン在住の商人が貿易のためスペイン沿岸に船を出しました。その後、本格的な荒れ模様になり多くの船がパニックになり沈没した、その少し前にこの船も難破したとのニュースが数度伝わりました。
商人はこの船に多額の保険を掛けていました。しかし船が遭難したという情報がすぐに広まったため、保険引受人達はこの件に知らん振りを決め込んでいます。この商人の友達が私に質問してきました。「船は本当にやばいのか、それとも無事か」私はこのチャートを立て、占断の手法に則って考慮し、ある結論にたどり着きました。
「船は無事です。最近危機に見舞われたにもかかわらず、いまは船の点検も終え平穏を取り戻しています」私の判断は以下申し上げる技術によっての充分な考慮に基づくものです。

アセンダントカスプは蟹の11degr.33min、蟹サインは船の胴体部もしくは船倉(訳者注:船舶で貨物を積んでおく所。上甲板下方にあり、隔壁で囲まれる)を表します。蟹のASCの極めて近くに3つの恒星があり、土星の性質を有しています。土星はカーディナルサイン・11室にあってASCにシニスタースクエアを形成し、よって害を成しています。これを踏まえつつも、自身のイグザルトサインにある月がASCにシニスターセクスタイル。ASCに作られるオポジションアスペクトはこの種の質問において凶兆のため、本チャートでの7室水星・太陽がASCにオポジションしている図もまた、外からもたらされる危険を暗示しているのですが、この間に月のセクスタイルが割り込んでいます。

アセンダントは土星のスクエアと土星質を持つ恒星の存在の両方から損なわれており、私はこの船が土星性質にひたっていると判断します。すなわち鈍重で重々しく、大してスピードも出ず地味で作りも貧弱です。上昇蟹は弱いサインですので、船の作り、状態、質も大体そんなもんだろうと読みました。(そしてそれは白状してくれました)

ここからドラゴンテイルが9室にあることも織り交ぜ、私は船が航行中、土星によって表されるような不慮の災難から発生したトラブル、すなわち船の前胸部近くに何カ所かの故障、漏水等が起こり、困難な状況にあったと観ます。
土星が入るサイン牡羊はその辺の部分を管理しそれ故傷つけられていると読むのです。
しかしアセンダントのレディである月は11室にあってイグザルテーションであり、太陽および水星との良いアスペクトであるトラインに接近しており、木星への接近コンジャンクションもあります。全てのシグニフィケイターが地平線上にあります(この占断でもっとも考慮すべき事項です)。

よって損傷要素は見当たりません。他にも、アングルに凶星がないことを吉兆の一つと捉えました。これらを考慮し、私はこのような見解を下しました。船は難破していず無事の模様であり、船員も船長も元気で乗務していますと。

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感想ノート

消息不明者の安否を観る手法と例題チャートに続いて、今回は船の安否、質問者が送った船は道中何事もなく無事目的地に到着するか、それとも途中で大時化に遭って沈むか、海賊に拿捕されて荷物を根こそぎ持っていかれてしまうかをホラリーチャートによって観る手法を5ページに渡り列記したのに続いて、例題チャートで上記の手法を用いた実践を著しています。

当時、損保会社はまだ存在せず、船舶および積荷に対する保険は、好景気の英国経済が生み出した小金持ち、貿易商や金融業者の個人的な副業に過ぎない場合が多く、シティのあちこちで呼び売りする程度のものだったようです。世界最大の損保会社の一つロイズの母体であるロイズコーヒーハウスが開店したのは44年後の事です。

一方、17世紀後半のヨーロッパの船は帆船で、船の性能、航海術、通信手段とも未熟で、戦争に巻き込まれる危険もあれば海賊に襲われる可能性も高く、船を出す事自体リスキーで冒険的な行為と言えました。リリーのもとにこの種の質問依頼は多く寄せられたと想像します。

船の安否チャートを観る基本となるのは、
1.アセンダントサインと月が船、および船に積んだ荷物の象徴である。
2.アセンダントのロードは船員(乗員)の象徴である。
です。

例題チャートでのASCは蟹11度33分。これが本件における『船』の本象徴となります。P158に黄道サインと船の各箇所との象徴対応が記してありますが、それによると蟹は船底(Bottom or floor)を表すとあります。チャートの説明の中では蟹はBulk(船倉)とかBody(胴体部)である、と前述とは違う言葉を用いていますが、多分船の中で最も低い、常に海面下にあるような部分という理解で良いのかなと思います。

この近辺に3つの土星質の恒星があると記していますが、おそらくCanopus(蟹10度)、Mekbuda(蟹10.01度)、Wasat(蟹13.33度)のことではないかと思われます。
これらはいずれも土星の性質を保持しています。加えて牡羊にある土星からスクエアアスペクトを受けていることにより、アセンダントは非常に土星的であるため、船もまた土星っぽい感じ、スピードはのろく、船体は重々しく、作りもお粗末なため何かと機能的にトラブルが多い、とリリーは観たようです。蟹サインが弱い(weakly)と書いてありますが、そのような記述はサインの説明の章にもなかった様な気がするのですが、ちょっとわかりません。

さらに7室に惑星があると、ASCに7室在惑星がオポジションしている状態と考え、この種の質問では危険であると述べているところが個人的には興味深いです。

9室にドラゴンテイル在は旅行中の苦難を示すと捉えたのでしょう。これも加味してリリーは牡羊にある土星から、牡羊に割り当てられた船の箇所、船の前胸部、前の湾曲している部分にトラブル、故障や破損が起きていると解釈しました。

しかしこのような問題が船に起こっていても、リリーは「多少のトラブルに見舞われたようだが、船は修繕され船員も元気で無事だ」との占断を下しています。ネガティブな証明を覆す希望の暗示は

1.アセンダントサイン蟹のレディである月が良い位置にあり強化サインにある。
2.この月は7室在水星・太陽と吉角トラインを形成している。
3.月は木星にもコンジャンクション接近している。
4.全てのシグニフィケイターが地平線上にある。
(4はより考慮すべき事項らしい)
5.アングルに凶星がない。

以上の5つのようです。ASCが損なわれていても、アセンダントのロードorレディが強く、損なわれていなければ、多少のトラブルが起きても切り抜けて無事目的地に辿りつけるだろう、とのリリーの読みです。